オレのことも救ってよ

2009年5月13日

今日も教習所。技能教習が学科よりも進んでしまったため、一時技能をお休みして、今日は学科一時間のみ。

最寄りの駅まで迎えのバスが来てくれるため、予約して、到着時間の10分前にきっちり指定場所についた。すでにバスは来ていた。誰も乗っていない。オレ一人だ。

「村井です、宜しくお願いします」と運転手さんに伝えると、「はい!もう一人いらっしゃいますので、待ってくださいね」と明るく言ってくれたのは、先日技能教習を受けた教官だった。たった二人のためにバスを出してくれるなんて太っ腹だ。ありがとう。

座席に座り、シートベルトをする。さて、アラフォーのオレがColdplayでも聞きながら、陰気な気分で昨今の大不況を嘆いてみようか、民主の鳩山さんのあだ名は「ぽっぽたん」がいいんじゃないかなんて考えていたら、若いお母さんと赤ちゃんがバスに乗り込んできた。あ、もう一人ってこのお母さんだったんだ。赤ちゃんは六ヶ月ぐらいだろうか。教習所には託児所がついているため、赤ちゃんがいるお母さん達にも通いやすくなっている。

赤ちゃんをベビーシートに座らせ、「はい、だいじょうぶです!」と運転手さんに声をかけたお母さん。バスは駅を出発した。

そんな親子のほど近くに座り、iPodでド陰気なColdplayを聞いていたオレなのだが、なんだかジワジワとヘンな気分になってきた。話しかけたいのだ。うしろの座席に座っているお母さんに、話しかけたくてしょうがない。

最近味覚がジジイ化していることは何度も書いているが、今度は頭がオバサン化してきたらしい。ところかまわず誰にでも話しかけなければ気が済まないオバサンに。まるで突然変異した虫のようだ。メスでもあり、オスでもあるみたいな。

我慢したんだけど、どうしても我慢しきれずに、「何ヶ月ですか?」と聞いてしまった。明るく「六ヶ月です!」と答えたお母さん。

「大変ですねえ。免許、やっぱり必要になっちゃった?」

「そうなんですよー。予防接種とかあるし」

「そうですよねー。大変ですよねー」なんて言いながら、心の中で、「絶対にめんどくさいって思われてるよね」と考えて、ちょっと凹む。それでも、教習所に到着するまで、急に黙り込むわけにもいかず、なんだかんだと話題を見つけながら、結局30分ぐらいしゃべってしまった。

ロビーに入る。誰もいない。このままいくと、お母さんとロビーの椅子に座って雑談なんだが、それも申し訳ないと思い、隠れる。「ああ、バカだったな。話しかけるなんて・・・はずかしい・・・」

お母さんは、赤ちゃんを託児室に連れて行くために、事務所の中に入っていった。

学科の時間になった。二階に上がり、教室に入ると、オレの他にはたった一人しかいない。女の子だ。綺麗に染めた髪、長めの前髪、フリルのついた半袖、ピンクの腕時計、花の髪飾り。オレにない要素をすべて持っている女の子。ちらっと顔を見ると、とてもかわいかった。くりくりっとした瞳。小さな口。

いかんよ、話しかけちゃダメだよ・・・さて、アラフォーのオレが居心地の悪さをごまかすためにJETでも聞きますかとiPodを取りだした。学科開始まで約十分。広い教室に二人きり・・・

下を向いて教本をめくっていると、小さな声が聞こえた。

「すいません」

ぐわっ!話しかけられた!!

ものすごく慌ててヘッドフォンを外して、「はいっ!」と答えた。

「何時間ぐらい乗りました?」

「ええと、もう15時間ぐらい乗ったかな」

「私、デイタイムしか来ることができないから、なかなか進まないんです」

「私もそうですよ。なかなか時間見つけることができないし・・・」

うふふ、アハハ、だいじょうぶですよ、きっと取れますって・・・これ以上できないぐらいの作り笑いがべったりと顔面に張り付いたオレ。もうダメ、助けて、無理・・・と思った瞬間、教官が教室にはいってきた。学科の授業が始まったのだ。張り付いた作り笑顔を顔面から引っぱがすのに苦労した。

1時間の授業中、頭の中にあったのは、「授業が終わったらどうやって彼女にさようならを言えばいいのか・・・」それだけだった。結局、授業が終わると逃げるように教室をあとにし、そのまま教習所を出て、近くのスーパーでアサリを買って、電車で帰ってきた。

電車内で文春を読む。オリバー・ストーンの「ブッシュ」、話題になっているみたいじゃん。チラシにオレのコメント、ちゃんと乗っていたみたい・・・みのもんたの横に。

最寄りの駅に到着し、階段を下りると正面に紀香の赤十字ポスター。

オレのことも救ってよ、紀香。もうすぐ39になるんだけど、バカみたいなことばっかりやってるの。

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